<説教の要約>

西経堂伝道所牧師 西田恵一郎

 「あなたに言う。起きなさい」     

(列王記下4章32~37節、ルカによる福音書7章11~17節)

 

 人生には謎・不可解・神秘という領域があります。その最たるものが死だと言えます。ある時、イエスは亡くなったばかりの若者を担ぎ出している葬列に遭遇します。彼の母親が「やもめ」(12節)であり「町の人が大勢そばに付き添っていた」(12節)ことから、彼女は恵まれた環境に居なかったことが想像できます。主イエスは「憐れみ」(13節)を感じ ー 腸・肝が深く揺さぶられ ー 、「もう泣かなくともよい」(13節)とおっしゃいました。母親が十分に悲しみ、涙を流した後に掛けた言葉でした。イエスは彼女の悲しみや不安のすべてを理解した上で、ご自身が為すべきことを行われました。「起きなさい」(14節)の言葉と共に若者を甦えらせたのです。この様子を目撃した人々は、畏敬の念と共に、神を崇めました。900年程前、預言者を通して死者を蘇らせた神がイエスを通して再び「(民を)顧みてくださった」(16節)と感謝したのです。神は人を捨て置く方ではありません。「若者よ」は特定の個人への呼び掛け、そして「起きなさい」は洗礼を授ける時に使われる表現であることを思うと、主イエスは若者にキリストの命 新しい命(人生) を生きなさいと命じられたと言えます。悲しむ者、不安な者に目を留めておられるイエスは、私たちにも「新しい命を生きよ」と声を掛けて下さいます。