<説教の要約>

西経堂伝道所牧師 西田恵一郎

「主に立ち帰れ」

(ヨエル書2章12~14節、使徒言行録17章30~31節)

 

 灰の水曜日(受難節最初の日)に読まれる聖句の一つがヨエル書2章12~14節です。預言者ヨエル(紀元前5世紀頃)は神から離れた結果自ら招いたイスラエルの荒廃をバッタの襲来を喩に描写します(1章4節)。「主は恵みに満ち、憐れみ深く怒るに遅く、慈しみに富み災いを下そうとしても、思い直される」(2章 13節)お方です。しかし、神の審判を招いてしまった今、民に必要なのは「衣でなく心を裂き、あなたがたの神、主に立ち帰(る)」ことだとヨエルは語ります。イスラエル民族第三代族長ヤコブは双子の兄エサウから長子の特権と父の祝福を横取りします。兄から命を狙われたヤコブは叔父の許に逃れます。狡猾な叔父ラバンに騙され、利用されたヤコブはやっと人の痛みや屈辱を理解するようになります。そして遂に兄との和解を決心し、兄の住む地に向かいます。不安と恐怖が募る中、彼はヤボクの渡しで真剣に神と向き合い、神の使いと格闘します。格闘に敗れた神の使いはヤコブ(足を引っ張る者の意味)にイスラエル(神が支配されるの意味)という新しい名を与えます。新しい一歩を踏み出す時に必要なのは、神に裸の自分を曝け出し、自分の非を認め、やり直す決心をすることです。これがヨエルの言うところの「心を引き裂き、神に立ち帰る」です。「恵みに満ち、憐れみ深く、怒るに遅く、慈しみに富む」神と出会う道はこの方法しかないのです。